香港のお正月 年末編 

文化・伝統

「もういくつ寝るとお正月〜!」ですが、新しい年になっても、香港には行けそうにもありませんね。でも正月の雰囲気だけでもお伝えしたい、ということで、香港のお正月について、今回は特に年末についてお話しします。

香港のお正月はいつ?

ご存知の方も多いかと思いますが、日本は毎年1月1日が元旦ですが、香港のお正月は旧暦で祝いますから、元旦の日付は毎年変わります。

ところで、旧暦って何?

新暦、旧暦という言葉は知っていても、それが何なのか、私にもはっきりわからないので、ちょっと調べてみました。

太陽暦と太陰暦、そして太陰太陽暦

暦というのは、時間を年や、月、週、日などの単位で分けたものです。

暦にはいろいろあって、太陽の動きを元にして日を数えるのが「太陽暦」で、一年を365日で、その一年を12の月に分ける暦です。実際、太陽が地球の周りを一周するのはキッチリ365日ではないので、その調整のため閏年(うるうどし)があります。

日本は明治6年に、この太陽暦を日本の暦として採用しました。そのため、この「太陽暦」が「新暦」と呼ばれています。

そして、その前に使っていたのが古代中国を起源とする「太陰太陽暦」です。前に使っていた暦なので、「旧暦」と呼ばれているんですね。

「太陰暦」は月の動きを元にして日を数えます。月は地球を一周するのに29.53日かかるので、それを一ヶ月とすると、12か月で354日となります。そうやって数えていくと、太陽暦より一年が11日短くなっていって、「3月から6月が春、その後9月ごろまでが夏」といった月日と季節の関係がどんどんずれていってしまいます。そこで、32~33か月に一度うるう月を入れて13か月とし、そのずれを解決する「太陽太陰暦」が使われるようになりました。

中国や香港などでも、カレンダーはもちろん「新暦」を使っていますが、伝統行事は旧暦でお祝いするんですね。香港では「旧暦」のことは「農暦」と読んでいます。

年末の風物詩「年宵花市」

旧正月の1週間前から、各地域の公園や運動場に臨時の「花市(フラワーマーケット)」が設けられます。

Photo by Miaxsum Hodlma, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons

 

日本ではお正月に門松や鏡餅を飾りますが、香港では家の中に「金桔(キンカン)」や「五代同堂(ツノナス)」などのおめでたい花を飾ります。

これが五代同堂です。
Photo by Hariadhi, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons

「花市」で売られるのは、花だけではありません。など、またいろいろな食べ物の屋台も出て、日本の縁日のように賑やかな雰囲気に包まれます。

政府のWebサイトを見てみると、今のところ、これらの場所で「花市」が開かれるとのことですが、今年は新型肺炎の影響があるので、いつも通りにはいかないかもしれませんね。

家族揃って「團年飯」

大晦日(広東語で大除夕(daai6 ceoi4 zik6))でなければならないということはないので、日本の「年越し蕎麦」とはちょっと違いますが、年の終わりに家族揃ってご飯を食べます。

日本のおせち料理と同じように、海や山の幸を盛り込んだ様々なおかずが並びます。中国、香港にはおめでたい時に使われる4文字の縁起を担いだ言葉があり(日本で言うなら「家内安全」「無病息災」のような言葉)、食材やおかずの名前が、そのお祝い言葉と結びついているのも、おせち料理に似ていますね。

食材 海老

エビは広東語で「蝦(ハー)」。発音が「哈」と同じです。「哈哈哈」が笑い声のハハハと通じるので、「笑口常開(いつも笑顔でいられますように)」という意味があります。

食材 魚

広東語の「魚(ユイ)」は「(特にお金に)余裕がある」という意味の「餘」と発音が同じです。「年年有餘(いつも生活に余裕がありますように)」という意味があります。

「髮菜蠔豉」 海藻と干し牡蠣のオイスターソース煮

「髮菜(ファッチョイ)」というのは、もずくのような海藻を干したもので、それを「干し牡蠣(ホウシー)」とオイスターソースで煮込んだおかずです。
「ファッチョイ」は「發財(お金が儲かる)」「ホウシー」は「好市」と発音が同じで、「發財好市(商売繁盛)」の意味があります。

糕(餅)

香港にはいろいろな種類の餅があります。甘いのも、塩味のもあって、日常的に食べられているのですが、この「糕(コウ)」という言葉、発音が「高」と同じなので、この時期によく食べられます。

成績、売り上げ、何をやっても進歩するという「年年高高(毎年進歩する)」とか「歩歩高陞(進めば進むほどよくなる)」といった意味があります。

若い人は知らないかも? 昔ながらの伝統習慣

香港の正月準備は23日の「祭灶」から始まります。この日は「灶神」という火の神様に家内安全をお祈りします。

これが火の神様。夫婦です。台所の神様とも

24日は「開炸」です。この日にはお正月食品のうち「煎堆(揚げた胡麻団子)」や「蛋散(卵味の小麦を揚げたもの)」など、揚げ物系スナックを作ります。

これが蛋散。カリカリでおいしいけど、高カロリーで結構お腹にたまります。

25日は「蒸糕」。前に紹介した様々な「糕(餅)」を作ります。年の瀬の挨拶として、自分が作った「糕」を知り合いに配ってお正月に食べてもらう人も多いです。
28日は「洗邋遢」です。この「邋遢」という難しい字は日本語で言うなら「汚れ」という意味で、一年の汚れを洗い流す「大掃除」をする日です。
29日は「貼揮春」で、「揮春」という縁起を担いだ言葉や詩を家の中のいろいろな場所に貼ってお正月気分を盛り上げます。

揮春。「福」の字は福が舞い降りるように逆さに貼ることが多いです。 Photo by Helanhuaren, https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Xlhhduilian.jpg

30日は「團年」。ということは、昔は「團年飯」を食べるのはこの日と決まっていたんですね。30日は「賣懶」の日でもあるんだそうです。この「懶」は日本語の「なまけ心」。この日に「なまけ心」を「売(賣)」ってしまって、新しい気持ちで、お正月を迎えましょうということなんでしょうね。

 

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